もじもじカフェ第33回「人の名づけに使える字」に行ってきた
今回のもじもじカフェは初の大阪開催ということだったが、他に「写植の時代」展が開催中ということもあって、ちょっと足を延ばして行ってきた。
ゲストは京大の安岡孝一先生。安岡先生には以前拡張漢字C & GlyphWiki勉強会でお会いしたことがあったが、講演を生で聴くのは今回が初めてだった。先生がお書きになった『キーボード配列 QWERTYの謎』や『文字符号の歴史―欧米と日本編』などは、さまざまな資料に当たって事実関係を徹底的に調査した上で書かれており、正確性も信頼性もかなり高いように感じるが、その反面、「ちょっと気になって開いてみたけどそこまでがっつり興味があるわけでもないし……」というような素人にとっては、率直なところ若干堅すぎる気がしないでもなかった。
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そんなこともあって「お話についていけるだろうか」とちょっと不安だったものの、いざ始まってみるとそんなことは全くの杞憂。終戦直後の話から始まるのだが、早口めな安岡先生のペースにあっという間に引き込まれてしまった。「実はローマ字が人名に使えるようになっていたかもしれなかった」とか「『子供にこの字を使いたい、人名用漢字外なのはおかしい』と訴えのは行政書士さん」とか「平成16年以前に(当時人名用漢字外だったはずの)『凛』ちゃんがたくさんいる」とか、その時々の裏事情や興味深いエピソードが盛りだくさんで、聴いていてとてもおもしろかった。漢字制限の歴史や審判の結果など、「事実」の外側だけを眺めているとなかなか気づかないが、名づけをする親も漢字制限をする法務省もそれを運用する窓口の人も、やっぱり文字を使うのは人間なんだなーというのを再確認。
また「名前の漢字も、ケータイで出るぐらいの範囲ならOKにしてもいいのでは」というような、安岡先生ご自身の率直な意見が聞けたのも、「専門家はこう考えているのか」ということがわかって収穫だった。いわゆるキラキラネーム/DQNネームについても「漢字が制限されているので、なるべく一意となるように識別子をつけようとしたら自然と捻った読みになる」というような説明をされ、(言われてみれば至極当然のことだが)かなり腑に落ちた。
実際のお話はもっともっと盛りだくさんだったが、途中からはメモを取るのも忘れてとてもおもしろく聴くことができた。ちなみに後で大石さんから伺ったところによると、なんでも安岡先生は昔ミュージシャンになりたくて、今でも講演はライブだと思ってやってらっしゃるんだとか。機会があったら文字コードでもタイプライターでも何でもいいので、是非また安岡先生のお話をお聴きしたい。
蛇足
『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』なるラノベが出ているようだけど、「七々々」って名前は実際には付けられるんだろうか……?
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