本の森をたずねて
先日書いた『くおんの』*1のという漢字(以下、本×3と表記)について、続き。
id:funaki_naoto さんの記事「本の森」を読んで、この漢字が筒井康隆『本の森の狩人』*2でも使われているということを知った。で、『本の森の狩人』は読売新聞朝刊の読書欄に連載していたものだというので、活字の本×3がないかと思って縮刷版を見てみた。
本×3 @読売新聞
下の画像は、1992年1月27日付け朝刊の7面に掲載された「本×3の狩人」(第4回)の記事。
*3
題字の本×3は篆書風のロゴになっている。また本文の1行目には、明朝体になった本×3が使われている。この連載は1年間(全51回)続くが、連載本文中に活字の本×3が現れるのは、残念ながらこの1箇所のみのようだ。
ただ、活字の本×3が使われている箇所は、実はもう一つある*4。最終回が掲載された1992年12月21日の紙面で、9面の「おことわり」にこの文字が見える。
記事にあるように1993年1月4日からは「本×3の散策」という連載が開始され、これは1995年5月1日(第118回)まで続いている。この連載の題字には「本×3の狩人」の題字を流用したもの(「狩人」が「散策」になっただけ*5)が使われていた。こちらの本文については調べていないが、雰囲気としては本×3は出てきそうにない。
本×3 @本の森の狩人
funaki_naoto さんが記事に書いていたのが、この『本の森の狩人』。タイトルについて、「はじめに」から引用すると、
これは一九九二年(平成四年)、一年間にわたって『讀賣新聞』朝刊の読書欄に連載したものである。そもそもは「の狩人」というタイトルだったが、文中にもあるように本にする際造字であっては各方面に迷惑をかけそうなので、このように改めた。
筒井康隆『本の森の狩人』岩波書店、1993年、p. i, ii
……
文中にも出てくる讀賣新聞社の最初の担当者・鵜飼哲夫氏には前出のタイトルのアイディアその他いろいろと貴重なご意見を戴いた。
とあるので、この鵜飼哲夫氏が本×3という漢字を創り出したようだ。この本で本×3が登場するのは、上に引用した部分と、第4回の本文(最初の画像の部分。p. 14)の2箇所だけ。
『くおんの森』と『本の森の狩人』
『くおんの森』の作者・釣巻和氏の日記には くおんの(←造語)です。
と書かれている*6ので、おそらく「本×3の狩人」の本×3とは独立に創作されたものだろう。「本×3の狩人」の連載当時は、作者はまだ5,6歳だし*7。字形が同じで(たぶん*8)意味も近いので、暗合といって良いのかもしれない。ただ、『くおんの森』の「本×3」は、「本の森」ではなく「もり」と読むようなので注意。
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