『文字の文化史』
- 作者: 藤枝晃
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1971
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吉祥寺かどこかの古本屋で以前買ったもの。ちびちび読み進めて読了。280ページ。
函に入っていてクロスで装丁してあって、と堅い印象を受けるが、語り口はそこまでは堅くない。殷代の銅器の銘から始まり甲骨・木簡・印章・帛書、そして紙の巻物・折本・冊子本など、中国の文字について解説が続く。そして突厥文字・ウイグル文字など中国周辺の文字にも少し触れ、残りは活版に至るまでの印刷史が採りあげられている。
あとがきで著者はこう述べている。
書道史でない書の歴史、文字のかたちだけに片寄らない文字の歴史と言ったようなものを見出せないだろうか、と思い立ったのは、あまり古いことではない。 […] ふつうの書道史と、歴史や文字、哲学、ないし書誌学などとの間に、ずいぶん広大な領域が、どの専門からも手がつけられずに放置されているのが、だんだんと見えて来た。たとえば、一巻の古写本を見るとき、書家は字のかたちや筆先の捻り方にもっぱら関心を向け、文学や哲学の専門家はそこに書き現された事がらの内容や思想をひたすらに追及する。その中間ともいうべき、写本の材料やかたち、その本の作られ方、しまわれ方、よまれ方など、そう言った書物の内容以前のことがらは、あまり問題にされない。
藤枝晃『文字の文化史』 p. 277–278
たしかに、漢字の歴史が書かれているような本を見てみても、このあたりに関する記述は少ない。この本では、今まで知らなかった「あまり問題にされない」部分がテーマになっていて、なかなかおもしろかった。白黒ではあるものの、本文中には大きな図版が100以上も載せられている。この本をまとめる*1にあたって、せめて八割は、私自身の撮影した写真を使いたいと考えて
手間をかけて著者自身が撮り直したという。
# それはそうとして、学校で習った中国史の知識をすっかり忘れてる…orz
# ということに(今さら)気づいた。
*1:本書は、『日本美術工芸』という雑誌での連載を再編集したもの。