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しろもじメモランダム

文字についてあれこれと。

和文書体の分類方法いろいろ ―前篇

書体を分類する

書体を分類(=整理、体系化、ラベルづけ)すると、いろいろなメリットが生まれてくる*1。カテゴリから書体を検索したり、雰囲気の似た書体を探したり。もちろん、研究や分析もしやすくなる。ちょっと考えてみればわかるが、「明朝体」というカテゴリ名称がなかっただけでも一大事だ。

書体の分類方法にはいろいろな種類があるが、例えばモリサワのサイトの書体分類では以下のようになっている。

  1. 和文書体
    1. 明朝体
    2. ゴシック体
    3. 丸ゴシック体
    4. デザイン書体
    5. 装飾書体
    6. 筆書体
    7. 新聞書体
  2. かな書体
    1. かな明朝体
    2. かなゴシック体
    3. かな丸ゴシック体
    4. かなデザイン書体
    5. かな筆書体
  3. UD書体
    1. UD書体
  4. 学参・筆順
    1. 参書
    2. 学参かな
    3. 筆順書体

このように、各ベンダーのサイトやカタログといった書体の総数が少ない場においては、そこまで大規模な分類は必要にならない。

大規模な分類方法

これに対し、例えば全ベンダーの書体を網羅した見本帳など、多数の書体を扱う必要がある場合には分類も大規模なものになってくる。近年のデジタルフォントの充実によって大型の見本帳がいくつか発行されているが、そこで採用されている大規模分類を以下に紹介する。

小宮山分類

基本日本語活字見本集成 OpenType版*2(2007年)において、小宮山博史は「デジタル書体の分類試案」として次のような分類方法を提唱した。

  1. 基本書体
    1. 明朝体
      1. オールドスタイル
      2. スタンダードスタイル
      3. モダンスタイル
    2. 角ゴシック体
      1. オールドスタイル
      2. スタンダードスタイル
      3. モダンスタイル
    3. 丸ゴシック体
      1. オールドスタイル
      2. スタンダードスタイル
      3. モダンスタイル
    4. ミックスタイプ
      1. 明朝系
      2. 角ゴシック系
      3. 丸ゴシック系
  2. 伝統書体
    1. 一般書写体
      1. 毛筆体
        1. 篆書
        2. 隷書
        3. 草書
        4. 行書
        5. 楷書
        6. 教科書用楷書体
      2. 木版書体
        1. 宋朝体
      3. 石刻書体
        1. 古印体
      4. 筆記体
        1. ペン
        2. 鉛筆
    2. 古筆
      1. 日本
      2. 中国
      3. その他
    3. 江戸文字
      1. 勘亭流
      2. 相撲文字
      3. 寄席文字
      4. 髭文字
      5. 籠文字
      6. その他
  3. ファンシー書体〈装飾書体〉
    1. クラフト
      1. 筆による造形
      2. 明朝体をもとにする
      3. ゴシック体をもとにする
      4. ドット文字
    2. フリースタイル
      1. 筆による造形
      2. ペンによる造形
      3. 明朝系
      4. ゴシック系
      5. ニュースタイル
    3. ブラッシュ
      1. 筆による造形
      2. 明朝系
      3. ゴシック系
    4. ポップ
      1. インライン
        1. 平面
        2. シャドウ
      2. アウトライン
        1. 平面
        2. シャドウ
      3. 毛筆体
      4. 立体
      5. コントラスト
      6. ステンシル
      7. 部分的変形
      8. ゴシック系
    5. イラスト
      1. イメージ
      2. 図像
    6. 図案風
  4. ニュースタイル
    1. 中国風
    2. 基本書体(ミックスタイプを含む)
  5. 参書
    1. 明朝体
      1. オールドスタイル
      2. スタンダードスタイル
      3. モダンスタイル
    2. 角ゴシック体
      1. オールドスタイル
      2. スタンダードスタイル
      3. モダンスタイル
    3. 丸ゴシック体
      1. オールドスタイル
      2. スタンダードスタイル
      3. モダンスタイル
    4. 教科書用楷書体

この試案は、基本書体から装飾書体までのあらゆる書体を3〜4段階の階層からなるカテゴリに分類しようとしたもの。基本書体に関しては簡潔で分かりやすい分類となっているが、装飾書体の一部についてはどこに属するのか直観的でないものもある。

祖父江分類

一方、祖父江慎は『フォントブック[和文基本書体編]』(2008年)で次のような分類をしている。

  1. 漢字書体
    1. 楷書体
      1. 清朝タイプ
      2. 毛筆タイプ
      3. 教科書タイプ
      4. 宋朝タイプ
    2. 明朝体
      1. ベーシックタイプ
      2. シンプルタイプ
      3. 見出しタイプ
    3. 明・ゴ・中間
      1. セリフタイプ
      2. 太さ変えタイプ
    4. ゴシック体
      1. シンプルタイプ
      2. ベーシックタイプ
      3. 見出しタイプ
      4. 丸ゴシックタイプ
  2. かな書体
    1. 明朝体
      1. 金属活字タイプ
        1. 初号系
        2. 36ポ系
        3. 一〜二号系
        4. 三号系
        5. 四〜五号系
        6. 五号初期系
        7. 五号後期系
        8. (アンチック系)
        9. 五〜六号系
      2. スタンダードタイプ
        1. 小さめ系
        2. 大きめ系
        3. ぷっくり系
      3. 横太明タイプ
      4. 見出しタイプ
    2. 楷書体
      1. 清・宋朝タイプ
      2. 教科書タイプ
      3. 毛筆タイプ
      4. くずしタイプ
      5. 清朝・行書タイプ
    3. ゴシック体
      1. 金属活字タイプ
      2. ベーシックタイプ
      3. シンプルタイプ
      4. 書き文字タイプ
      5. 丸ゴシックタイプ
    4. 明・ゴ・中間
      1. セリフタイプ
      2. 太さ変えタイプ
  3. 参書
    1. 教科書
    2. 明朝
    3. ゴシック・丸ゴ
  4. 新聞書体
    1. 明朝
    2. ゴシック
  5. 変形書体
    1. AXIS
    2. タイプバンク

実際にはこれと対になる『フォントブック[伝統・ファンシー書体編]』があるのが、こちらは手許にないので表では割愛した。小宮山分類の基本書体の部分と比較すると粒度が小さくなっている。また、漢字とかなをすっぱりと分け、漢字は漢字だけ、かなはかなだけで分類してしまったところに祖父江分類の特徴がある。


後篇へつづく。

*1:もっとも、うまく分類しなければデメリットになるが…。

*2:書籍版は『基本日本語活字集成 OpenType版』。