しろもじメモランダム

文字についてあれこれと。

『文字本』

文字本

文字本

以前この本を延々と立ち読みした憶えがあるが(渋谷のブックファーストだったか)、先日改めて本屋で見かけ、つい買ってしまった。書体設計家の片岡朗氏が書いた本で、自身が制作した丸明朝体と iroha gothic に関する話がいろいろと載っている。本文の大半が丸明オールドで組まれているので、丸明の世界にどっぷり浸って埋もれることができる。一部には、軽い人生訓的な文字遊び(という表現でいいのだろうか)もあるので、ひねくれ者の自分にとっては少々耳が痛い。「文字」本で、文字組についても書かれているわりには、いわゆる dumb quotes ("")*1 が使ってあったりするが、これはどうなんだろう。

丸明が最初に使われたのが2000年2月のモルツの広告で、TrueType フォントの発売が2001年6月らしい。最近のことのように思ってしまうが、もう8年も経っていることに驚いた。一時期と比べれば、丸明の流行りはこのところおとなしくなったような気がするが、それでもちょくちょく丸明を目にする。片岡朗氏はこの本の中で「丸明朝体明朝体の新しいカテゴリー」と書いているが、似たような感じの書体(丸明モドキ?)が将来出てくるんだろうか。

関連:ほぼ日刊イトイ新聞 -担当編集者は知っている。

*1:日本語だと「マヌケ引用符」か。本来ならば smart quotes (“”) を使うべき。それぞれの正式名称(?)は straight quotes, curved quotes らしい。