タイポグラフィの世界 第5回「フォントの舞台裏」に行ってきた ―後篇
前篇のつづき。
3. 「モリサワフォントの品質管理」清水克真(モリサワ)
モリサワではどんなチェック作業をしてフォントの品質を確保しているのか、というお話。
モリサワではマスターデータを15000グリッド/emで持っている*1ため、OpenType 用の1000グリッド/emに変換する際に不要な点や輪郭の交叉、丸め誤差などが発生し、それらをまずチェック・修正する必要がある。その他にも細くなりすぎている場所*2や輪郭の方向などをチェック・修正し、すべてのチェックをパスするまでこれらの作業を繰り返す。その後 OpenType に変換し、1000グリッド/emの中間ファイルと比較してまたチェック。他にもいろいろと項目があるが、これらのチェックはほとんどプログラムで行っているとのこと。
OpenType フォントが完成したら、OS(Windows XP, Vista, 7, Mac OS 各種)と使用ソフト(MS Office, InDesign, Illustrator など)をいろいろ組み合わせて動作確認。フォントメニューの表示、入力と印字、PDFへのエンベッド、feature の動作確認、バージョン間での互換性などなど、確認項目は多岐にわたる。それ以外にもこれまたチェック項目があるが、すべてパスしてようやく製品となる。
全体では、マスターデータ完成後30〜40日かけてチェックや修正、その後さらに5日かけて動作確認をしているとのこと。こういった作業の内容は普段あまり表に出てこないので、中身を垣間見ることができて興味深かった。見た目には地味かもしれないが、これだけの手間をかけて地道にチェックしているってことはやっぱりそれだけ重要なんだろうなぁ…。
4. 「FontLab Studio による日本語かなフォントの制作」服部正貴(アドビシステムズ)
最後はフォント制作ソフト FontLab Studio と OpenType 開発ツールAFDKO*3(の中の mergeFonts と makeotf)を使って、CID-keyed な OpenType かなフォントを作ろう、というお話。
mergeFonts と makeotf を使った CID-keyed OpenType フォントの生成は花園明朝OTで経験していたので、今回のデモの内容も自分はだいたい理解できたが、まったく触れたことのない人にとっては何をやっているのかよくわからなかったかもしれない。
和文フォント試しに作ってみたいけど Illustrator とか FontLab Studio にお金がかかるのがちょっと……という人は、Inkscape → [SVG] → FontForge → [name-keyed OTF] → AFDKO (mergeFonts, makeotf) → [CID-keyed OTF] などという感じで作ればいいかも。
そうそう、話によればBASEテーブルがなんか重要らしいので、あとで調べる。
というわけで
充実した内容のセミナーだった。欲を言えばもっともっといろいろなお話を聴きたいぐらい。最後のかなフォントの制作についてはやってみたいけどよくわからんという人が結構いると思うので、半日〜1日かけて手取り足取り教えるワークショップみたいなのがあると理想的かもしれない。大変そうだけど。
そういえば最後の質疑応答や懇親会の席で皆さんから何やらプレッシャー期待をかけていただいたんですが、どうしましょう。物事にあまり真面目に取り組めない性質なのでここまで気ままにやってきたわけですが、もうちょっといろいろと考えた方がいいのかなー、んー、と悩んだり悩まなかったりする今日この頃。