ヒロインが書体デザイナーな小説がある
といっても書体に関するくだりはほんの数行しかなく、しかも本編中のヒロインはまだ中学生ですが。中里十の『君が僕を 4』という本がそれ。以下、ネタバレを避けたい人は回れ右推奨。
- 作者: 中里十,山田あこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/08/18
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 72回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
この本のプロローグでは、主人公の娘によって主人公やヒロイン(真名)たちのことが語られており、時系列的には本編(主人公たちは中学生)の半世紀ぐらい後(?)になっている。その中に、以下のようなくだりが現れる。
昔、台湾に旅行したときのことだ。料理店で出されたメニューに日本語が併記してあった。その書体に驚いた。幽霊に出くわしたような気がした。真名のデザインした書体だった。
真名は書体デザイナーだった。若くして死んだのに、本文用の書体を任されて完成したのだから、有能だったのだろう。止め撥ねの控え目な素っ気ない書体だった。私のような素人にも見分けがつくほど特徴のある書体だった。台湾の料理店で出くわすまで、私はその書体をサンプル以外で見たことがなかった。
中里十『君が僕を 4』小学館、2010年、p. 17
本文用で素っ気ないのに素人でも見分けがつく書体、といわれると一見矛盾しているようにも見えるけど、そんな性格を兼ね備えているなんて、書体としては結構理想的なような気もする。どんな書体だか想像がふくらみますね……。
あと、サンプルでしか見かないようなこの書体をメニューに採用するだなんて、メニューを作った人はなかなかのツワモノです。しかも台湾って。
ちなみに、真名が達筆だという描写は『君が僕を』シリーズのなかにちらほら出てくるものの、書体デザインに関するくだりはこの引用部分のみ。それにしても、ここに出くわしたときはかなり「おおおおっ」となりました*1。
関連
- 『君が僕を4 将来なにになりたい?』発売中
- moji > 小説・漫画・映画 小説・マンガ・映画の中に印刷や文字が出てくるもの