化学にまつわる漢字の小ネタ
中文版 Wikipedia をうろうろしていて知ったネタをいくつか。
中国語では、すべての元素が漢字一字で表される。しかも常温常圧下における状態によって、固体の金属なら【金】、固体非金属は【石】、液体なら【水】、気体なら【气】が部品になっていたりと、かなり合理的。漢字好きの人なら、一度はこの周期表を目にしたことがあるだろう。
水素の同位体
水素 H は【氢 】という。これはもちろん、「軽い気体」というところから作られた漢字。水素の同位体には 1H, 2H, 3H などがあるが、後ろの二つに対しては D, T という略号が(元素記号のように)使われることも多い。
この3種類の同位体、日本ではそれぞれ水素(軽水素)・重水素・三重水素と呼ばれている。中国語にも【氢】【重氢 】【超重氢 】という似たような表現があるようだが、実はすべて漢字一字で表せて(というか一字で表すための漢字が作られていて)、それぞれ【氕 】【氘 】【氚 】というらしい。
炭化水素
炭化水素とは、その名の通り炭素と水素でできた化合物。中国語で炭素は【碳 】なので、炭化水素は【碳氢化合物 】となる。
これも例によって、一字で表すための漢字が作られている。【烃 】という字で、偏は【碳】から、旁は【氢】から採られている。読みの についても、【碳 】の と【氢 】の を合わせたものらしい。
アルカンなど
単純な構造を持つ鎖式炭化水素に、アルカン・アルケン・アルキンがある。中国語ではそれぞれ【烷 】【烯 】【炔 】で、発音は少しずれている。
アルカンの名称は、IUPAC 命名法 で規則的に*1命名される。これは、炭素の個数に対応したギリシャ語数詞が基になっている。日本語では、それをそのままカタカナ表記するだけ。高校のときに「メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、…」と暗唱して覚えた人もいるかと思う。
中国語ではさらに規則的になり、十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)を使って【甲烷】【乙烷】【丙烷】…となる。11以上は、数をそのままくっつけて【十一烷】【十二烷】…といった感じ。
アルカンの語尾 -ane を -ene に変えればアルケン、-yne ならアルキン、-yl ならアルキル基になる。中国語でも同様に、アルカンの【烷】を【烯】に変えればアルケン(乙烯、丙烯、…)、【炔】ならアルキン(乙炔、丙炔、…)、【基 】ならアルキル基(甲基、乙基、丙基、…)。
Unicode に未収録?
mesitylene||均-三甲苯(艹/米)
有机化学命名法 (A部) - 维基百科,自由的百科全书
メシチレンの俗称として、艹/米
という字が挙げられている。簡単な字なので、収録されていてもおかしくはなさそうだけど。でもざっと調べたところでは載っていない。ちょうどいい機会なので、GlyphWiki で右のグリフを作ってみた。
*1:メタン・エタンなど例外はあるが。