しろもじメモランダム

文字についてあれこれと。

お前が見ている世界は、無限の可能性の中のひとつの事象に過ぎない、という話

例えば、新常用漢字の候補となっている「謙遜(けんそん)」の「遜」は、表外漢字字体表では、点二つの「●」が用いられている。(●は点二つのシンニュウに「孫」)

常用漢字 IT時代踏まえ議論深めよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

この記事を Web に上げた人は、「「遜」はPC上だと1点しんにょうで表示されるから」と思ってこんな記述にしたんだろうけど、JIS X 0208/0213 では1点しんにょうも2点しんにょうも包摂されている(包摂規準 連番128)わけで、どちらで表示されるかはフォントの実装次第ということになる。

数年前ならともかく、現在では「JIS2004対応」のフォントもかなり広まっている。Vista のMS書体(Ver. 5.00)も、LeopardヒラギノProN/StdNも、IPAフォントも、JIS2004の字形(「遜」だったら2点しんにょう)に基づいている。

字形を問題にしているような記事で、こういった中途半端な記述をするのはいかがなものだろう。上の引用部分の直後に

04年に改正された新しいJIS漢字コード表も、表外漢字字体表の字体を例示している。

常用漢字 IT時代踏まえ議論深めよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

なんて書いてあるんだから、気づいてもいいはずなのに。

「IT時代踏まえ議論深めよ」って見出しにあるけど、何というか、ねぇ。