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しろもじメモランダム

文字についてあれこれと。

わりと重要な追記:妛芸凡(あきおうし)はやっぱり誤植?

字形字体

つまり、漢和辞典、国語辞典、ワープロ(JIS第一水準、第二水準、および補助漢字等)には見られない字 の例として「妛芸凡」が挙げられているということだ。「妛」はJIS第二水準に収録されているので、やっぱりこれは

  • (b) 実際の苗字は「𡚴芸凡」
    • 『日本苗字大辞典』の「𡚴芸凡」が正しい。
    • 『苗字の〜』『電脳〜』所収「苗字−この不思議な符牒」に見える「妛芸凡」は誤植。

なような気がする。

妛芸凡(あきおうし)はやっぱり誤植? - しろもじメモランダム

上の内容を昨日のエントリに書いたが、重要なことを見逃していたので追記。

「妛芸凡(あきおうし)」が挙げられているリストの直後に、こんな記述があった。これを見落としていたなんて…orz どうやら私の目はフシアナだったらしい。

以上は『日本苗字大辞典』の中の頭字が六画の苗字の中から、二六姓ばかりを選んだもの。読み方は一種だけあげた。

丹羽基二「苗字―この不思議な符牒」(『電脳文化と漢字のゆくえ』 p. 166)平凡社、1998年

「𡚴」は6画、「妛」は7画。

ということで、やはり

  • (b) 実際の苗字は「𡚴芸凡」
    • 『日本苗字大辞典』の「𡚴芸凡」が正しい。
    • 『苗字の〜』『電脳〜』所収「苗字−この不思議な符牒」に見える「妛芸凡」は誤植。

のようです。

ただし、「実際の苗字は」というのは「丹羽基二が書こうとしていたのは」という意味であり、「𡚴芸凡姓が実在する」という明確な証拠は見つかっていないので注意。

原宏之『国字の位相と展開』では

丹羽基二『苗字のはなしII』(一九九八、芳文館)の第一章「苗字―この不思議な符牒」(これは、平凡社*1(一九九八)*2にも掲載されている)などに「妛芸凡*3」が見えるが、これは、「『日本苗字大辞典』の中の頭字が六画の苗字の中から」選んだものとあるように字体と画数が食い違っており、丹羽基二『日本苗字大辞典』(一九九六、芳文館)まで戻ると「𡚴芸凡」に作っている(出典表示を欠く)。少なくともこれは、過去にも「𡚴」となった例のある「安」によるもので、その誤植かとも疑われる。JISに「妛」があることで、さらに「幽霊用法」を誘発する原因となっている可能性が高い。こうしたあいまいな情報を引用元の検証を怠り、結果的に孫引きする例が、「山一女の謎」(http://homepage2.nifty.com/hat-nif/tokaido/ichirizuka/column83.htm)のようにあり、さらに誤った情報のいわば一人歩きが進んでいる。

笹原宏之『国字の位相と展開』p. 788 三省堂、2007年

と、このことについて書かれている。というか画数の件はこれを読んで気づいたわけですが…。

Wikipedia では

「妛芸凡」なる姓について触れている Web ページは、いくつか存在する。

まず、昨日の冒頭で引用した Wikipedia。最初の版ではこのようになっていた。

前述の「妛」は通称「やまいちおんな」と呼ばれるが、この文字にも「用いる地名が存在した」という都市伝説にも似た話が存在する。

幽霊文字 - Wikipedia 【2007年1月22日 (月) 07:33 の版】

「地名」の都市伝説となっているが、下の版で「妛芸凡という苗字」の都市伝説に訂正。出典などは示されていない。

前述の「妛」は通称「やまいちおんな」と呼ばれ、「꫔*4」(山かんむりに女と書き「あけび」と読む)の誤字とされているが、この「誤字」にも「妛芸凡(あきおうし)という苗字が存在した」という都市伝説にも似た話が存在する。

幽霊文字 - Wikipedia 【2007年1月22日 (月) 18:26 の版】

翌日の版で 丹羽基二の著書『苗字 この不思議な符牒』(芳文館) 同著者同出版社の『日本苗字大辞典』 という記述が現れる。

前述の「妛」は通称「やまいちおんな」と呼ばれ、「꫔*5」(山かんむりに女と書き「あけび」と読む)の誤字とされているが、この「誤字」にも「妛芸凡(あきおうし)という苗字が存在した」という都市伝説にも似た話が丹羽基二の著書『苗字 この不思議な符牒』(芳文館)に存在する。とはいえ、同著者同出版社の『日本苗字大辞典』では「あけび」の字が使われており、『苗字 この不思議な符牒』自体が誤字もしくはJIS基本漢字による印刷か行われた可能性もある。

幽霊文字 - Wikipedia 【2007年1月23日 (火) 05:20 の版】

現在の版も基本的には変わっていない。丹羽基二の著書『苗字 この不思議な符牒』(芳文館) とあるが、昨日指摘したように「苗字 この不思議な符牒」は『苗字のはなしII』の第一章のタイトルであり、書名ではない。

他の Web ページでの「妛芸凡」

コラム一里塚83 山一女の謎

妛芸凡(あきおうし)という苗字の人がいるのだそうだ。すると、朝日新聞の記事自体が、根本から覆ってしまう。確かに、文字を採取したときは、ふとした間違いからかもしれないが、実際にこの文字を使う苗字があるというのだ。第二水準の文字を制定したのが1978年であるから、その後、新たな苗字が生まれるはずがない。

コラム一里塚83 山一女の謎

『国字の位相と展開』の上で引用した部分で言及されているページ。2002年12月2日。

『電脳文化と漢字のゆくえ』拾い読み

また、丹羽基二さんのには「妛」が出てるようです

『電脳文化と漢字のゆくえ』拾い読み

これ以上の言及はなされていない。1998年2月4日。

幽霊漢字 - 恋の墓銘碑 - 楽天ブログ(Blog)

文字の構成から「やまいちおんな」と呼ばれるこの文字にも「妛芸凡」(あきおうし)と言う苗字が存在したというがどうも怪しい。

幽霊漢字 - 恋の墓銘碑 - 楽天ブログ(Blog)

比較的最近のエントリ。2008年6月7日。

和製漢字の辞典

苗字に妛芸凡(あきおうし)がある(丹羽基二著『苗字 この不思議な符牒』(丹羽基二編『日本苗字大辞典』は[山*女]芸凡とする)。[山*女]の字は、『中華字海』が魏時代の墓誌に見られる文字として「同安」とする。苗字の例も「安」の異体字と考えられる。

和製漢字の辞典:巻4(315a〜400)

少なくとも1999年1月29日には書かれている。「妛」と「𡚴」の差にも言及。引用文献に下の2つが含まれている。

  • 『日本苗字大辞典』, 丹羽基二, 芳文社,1996年7月1日初版第1刷発行
  • 『苗字 この不思議な符牒』, 丹羽基二,(『電脳文化と漢字のゆくえ』所収)

*1:「平」はソでなくハに作っている。

*2:『電脳〜』のこと。

*3:「あきおうし」とルビ

*4:原文ママ

*5:原文ママ