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文字についてあれこれと。

中文の古本を眺める(1)『東行三録』

昨日買ってきた古本の中から、まずは1冊目。

中国歴史研究社編、中国歴史研究資料叢書『東行三録』*1。上海書店印行。1982年9月発行、定価0.90元。奥付には 本書根拠神州国光社1951年版復印 とある。

内容については全く知らないが、前半の「東行初録」「東行続録」「東行三録」は、1882年あたりの朝鮮のことが書かれている様子。後半は「甲午戦事電報録」と「馬関議和中日談話録」。

本文は繁体で、こんな感じ。段落の頭は2字下げ。


左上を拡大。約物の組み方が独特。初めて見た。

このように【,。!?:;】の6つは、文字のすぐ右隣に組まれている。ざっと見たところ【、】は使われていなかった。

鍵括弧は「『』」ではなく『「」』の順で使われている。日本のものと比べると、ボディの真ん中寄りに作られている感じ。数箇所しか出てこないが、補足などには()ではなく〔〕が使われている。こちらは上の画像の通り、内側に寄っている。やや小ぶり。

禁則処理の例。行末に【『】がくるのを回避するため、四分のアキを4つ入れて追い出している。この方法は日本でも見る。

普通では禁則処理の対象となる【,。!?:;】は文字の横に組まれているため、考慮する必要があるのは【『』「」〔〕】だけとなる。実際にページをパラパラめくってみても、禁則処理の箇所はかなり少ない。この点を考えると、なかなか合理的な組み方。

*1:簡体・繁体は入力が面倒なので、以下すべて日本の字体に改めた。