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文字についてあれこれと。

『文字符号の歴史―アジア編』

文字符号の歴史 アジア編

文字符号の歴史 アジア編

文字符号の歴史 ―アジア編― / 三上 喜貴 著 | 共立出版

図書館で借りて読了。384ページ。

漢字は普段の生活で使っているので、漢字の文字規格を作ろうとしたときに何が問題になるのかはだいたい想像できる。例えば、「どこまでの文字を収録するか」とか「包摂の基準はどうするか」とか「どういう順で並べるか」などなど。これに比べれば、かなの場合は単純だ。文字数には限りがあるし、五十音順で並べておけばそれほど問題はない。

アジアの文字は形に馴染みがなく複雑に見えるだけで、基本的にはこのかなのように比較的簡単に扱えるものかと思っていたが、本書を読んでみるとそんな単純なものではないらしい。例えば結合音節文字*1では、符号化する単位を音節ごととするのか、それとも音節を図形的や音韻的な要素に分けるのか、あるいは「カラムワイズ・コーディング方式*2」をとるのかといった問題がある。また、漢字やかなでは文字の形が変化しないのでそれほど問題にはならないが、「文字」と「グリフ」、「符号」の関係も重要になってくる。文字が変われば文字符号上の問題点も変わってくる、ということが良く分かった。

姉妹編として欧米と日本編がある。

*1:文字の図形的構成が音節のの音韻的構成を反映している音節文字(p.35)

*2:音節を構成する図形を仮想的なカラムで区切り、用字の進行方向に沿ってカラム単位で符号化していく方法(p.129)