しろもじメモランダム

文字についてあれこれと。

縦書きブログを見てあれこれ

http://www.tategaki.jp/

実証実験中らしい。それぞれ体裁の異なった4つのブログが見本として閲覧できるが、この中では八軒家南斎のブログのスタイルがいちばん好み。Flash で表示しているようだが、文字列の選択やコピーもちゃんとできる。マウスホイールを上下にコロコロやれば記事本文が右・左にスクロールする*1ので、横スクロールもそれほどまでは苦にならない。記事が積み重なっていくのが地層のようでおもしろい。一行の文字数を減らして新聞風するのもいいかもしれない。

普段、ごく「普通の」人は MS Pゴシックのビットマップでブログを読んでいるだろうから、アンチエイリアスのかかった明朝体で綺麗に表示される、というのはかなりウリになると思う。ただ、縦書きで文字が綺麗に表示されていると、(PC 上の文字という意識が薄くなって)どうしても一般書籍と比べてしまい、細かいところが気になる。禁則処理で空いた所はちゃんと調整した方がいいんじゃない?とか、かなの中心が揃ってなくない?とか、2桁の数字は縦中横にした方がいいんじゃない?とか、その他いろいろ。普通のブログでは、まぁこういうもんだと思ってあまり気にしないが。

もう一つ。2月1日の記事の冒頭にリンクがあり、傍線でそれが示されているが、文字列の左側に引かれているのでどうも違和感がある。いや、横書きではルビ(文字列の上)の反対側に線が引かれてアンダーラインになっているんだから、縦書きでもルビ(文字列の右)の反対側(つまり文字列の左)に傍線を引いた、ということなんだろうけど。でも現代の日本では普通、縦書きでは右に傍線を引くわけで。Word でも、縦書きの文字列を選択して「下線」ボタンを押せば右傍線になるし。

あ、でも、「リンクは左傍線」というルールが確立されれば、それはそれでなかなか良いのではないかと今気づいた。「リンクは左傍線、強調(em要素とか)は右傍線」と使い分ければ、あの斜体を使わずに済むんじゃ? 「傍線の使い分け」という発想自体は日本だと幕末からあった*2わけだし。廃れたけど。

というわけで。数年前に縦書き実験サイトを見たときには、あまり使い物にならないといった印象だったが、今回のブログを見てみるとなかなか良さそうだ。細かいところではいろいろと改善の余地もあるが、結構うまくいくのではないかと思う。

追記

上のサイトはコンテンツ・ファームという企業が手がけたものらしい。

真性活字中毒者読本―版面考証/活字書体史遊覧

真性活字中毒者読本―版面考証/活字書体史遊覧

*1:画像の上で効かないのが残念。

*2:真性活字中毒者読本』 第1章 日本語組版の歴史(府川充男)より。手許にないので勝手ながら http://dosei3.no-ip.org/~uakira/n/?date=20040112 から孫引きさせていただくと、

一時期一般化していましたが、消えていったものに傍線があります。傍線は幕末の洋学の翻訳書などの中で多用されたものです。一重の傍線、二重の傍線、それも右に付けるか、左に付けるか、それでもって人名とか地名とかジャンルを分けていたということがあります。

と書かれている。