『校正の美学』
- 作者: 長谷川鉱平
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 1969
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古本屋で購入(500円だったっけ?)。定価は890円、373ページ。単に校正といっても校正の進め方はもちろんのこと、ルビのつけ方、約物の使い方と禁則処理、新旧かな遣い、当用漢字・教育漢字・人名用漢字、送りがなのつけ方、本づくりの常識、欧文活字のあらまし、活版印刷の簡単な歴史まで、さまざまな基礎知識が詰めこまれている。
1969年の本なので活版印刷を念頭に書かれており、「写植」という語は数箇所しか出てこない。本書の中で、誤植の分類の一つに「転倒」というものが挙げてある。活字を横向きや上下逆さに組んでしまうことだが、今まで見たこともなかったし、そんなミスがあることさえ知らなかった。また、メツ字(字面に欠けがある不良活字)が無いかどうかのチェックも、活字ならではのものだ。他にも誤りやすい漢字やかな遣いなど、校正において注意すべき事項がいろいろと載っている。これを見ていると、DTP になって随分と校正が楽になったのではないかと思ってしまうが、実際のところはどうなんだろうか。
『校正の美学』なるこの本であっても、(初版第1刷だからというのもあるだろうが)よく見てみると実はいくつか誤植がある。
- 「習う」の未然形で「nara-wa」となるべきところが「mara-wa」となっている(p.159)。
- 「かかり(係)」の「り」を送るか否かという文脈なので「…係(進行係)」となるべきところが、「…系(進行系)」となっている(p.191)。p.195 の用例集の中では正しく表記されている。
- これは組み誤りと言ってしまってよいのか微妙だが、「Civilization」の「i」のドットが欠けている(p.364)。
- 「à, è, ù」の「è」だけイタリックになっている(p.367)。
- これは誤植ではないが、「じ・づ」の使い分けの例に挙げられていたもの(p.166)。「〜鼓」の読みは「つづみ」か「づつみ」か、とよく問題にされるので気になった(大辞林・NHK・ATOK)。ちなみにうちの MS-IME は「したつづみ」「したづつみ」「はらつづみ」は変換できたが、「はらづつみ」では変換できなかった。
普通の文章ならともかく、やはりこういった図表中の単語の羅列やアルファベットでは誤りに気づきにくいのだろう。