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et―アンパサンドの変遷と構造

Ampersand(アンパーサンド)における「et」の痕跡 - 記憶の彼方へ

アンパサンド(ampersand, &)の形についての、上の記事を読んだ。アンパサンドは「et」のリガチャ(合字)だが、その「et」からどのようにして「&」のような形になったのだろうか。

"&"(アンパサンド)の正しい書き順: 極東ブログ

この記事は「&の書き順を教えて下さい」という質問に関するものだが、「普通の英米人は “&” の形状を使わない」など、いろいろとおもしろいことが書かれている。ただ、「&」のつくりについてちょっと気になった。

つい最近ヤン・チヒョルト(Jan Tschichold, 1902–74)の『&記号の変遷』*1という小冊子を読んだので、これを基にして(というか、これを信頼しきって)et → & の変化をごく大雑把にまとめてみる。アンパサンドについて簡単に解説されている Adobe のページ(以下単に Adobe と記す)も参考にした。以下の図は、本書から抜き出して一部加工したものであり、図の番号は元のものをそのまま振ってある。また、「E」「T」の大文字小文字は特に区別していない*2

ということで、最も一般的なローマン体*3アンパサンドの成立過程を見てみる。図の下段では構造がわかりやすいように、「E」および「T」の縦画・横画をそれぞれ別の色で示した。また、「T」の縦画の終筆(テール)側にあたる部分にピンクの丸で印をつけた。

*1:原著は Formenwandlungen der &-Zeichen, Frankfürt am Main: D.Stempel, 1954。武村知子訳。アイデア 321 ヤン・チヒョルトの仕事asin:B000MV7YYC)の付録。肝心の本誌の方はまだ読んでいない。

*2:きっちりと分けられるものでもなく、またそれほど意味を持たないと思われるので。

*3:ここでは(イタリック体に対して)正体のセリフ書体の意。

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